shigiphoto days

FUJIFILM GFXシリーズで撮った写真をつらつらとご紹介。

FUJIFILM GFX100S IIを購入して1ヶ月使ったのでショートレビュー

はじめに

5月の終わりに発表され、6月末に発売されたGFX100S II。ブログでは紹介していませんでしが発売当日にしっかり入手していました。ちょっと触った感想回では「オイル交換みたいなモデルチェンジ」なーんて書いていたのにね。ユーザーは勝手なもんですw まぁ買う買う詐欺よりはいいでしょう。ということで今回も好きにレビューをしたためようと思います。

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FUJIFILM GFX100S II, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, h2

www.shigiphoto.com

(写真は本文と関係なく貼っているので、文章の骨休め的に見ていただければと思います)

 

購入理由

これは「オイル交換みたい〜」なんて言いつつも、実機タッチアンドトライが好印象だったからです。あとは、丸3年使ったGFX100Sがくたびれてきたというのも大きい。富士フイルムのカメラ全般の弱点は質感で、特に使い込んだ機材は「味が出た」「エイジング」という表現の対極にある「みすぼらしい」になってしまいます。100S君もその兆候をちらほら感じており、リセールが効く間に売ってしまおう、という魂胆もありました。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/2.8 1/640 55 mm ISO 80

 

また、この先数年間はGFXで写真を撮り続けたい、写真活動の軸はGFXがいい、というのも大きな理由です。私は2019年の後半からGFXシステムを使っています。あと数ヶ月で丸5年。この5年はそれまでに比べて明らかに写真に関するQOLは高かった。

GFX100S IIのサイトにいいこと書いてあるので引用します。

1億2百万画素×ラージフォーマットの圧倒的な描写力。
高速性能と強力な手ブレ補正による瞬発力。
これらがGFX100シリーズ最軽量の、
コンパクトなボディに秘められている。
より好きな場所に持ち出せるようになった1億画素「GFX100S II」
このカメラはただ「記録」するのではない。
頬を撫でる風の感覚。
冬の夜明けの清冽な空気。
その中で響くシャッターの音。
GFX100S IIはあなたにとって大切な「今」を、
あなたの「感じたもの」とともに、鮮明に切り取る。

ちょっとポエミーですが、ここに書いてある事はそのまま私も感じていて、この体験、撮影を5年間(うち1年は50Rですが)積み上げた事は自分にとって大きく、人生の糧になったと感じています。もちろん体験だけでなく写真もしっかり積み上がってますしね。この流れを継続するための買い替え、ということになります。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/2.8 1/40 55 mm ISO 800

 

軽く自己紹介

細かいレビューを行う前に軽く私について説明しておきます。撮影対象、スタイル、経歴によって物の感じ方や評価は大きく違いますからね。

  • 所有デジカメはGFX50R→100S100S II、基本的に1台のみで運用
  • 現在の主力レンズはGF55mm
  • 主な撮影対象は、風景・スナップ・娘ちゃん・たまに甥っ子ちゃん
  • 目が悪く常時メガネ使用
  • 撮影枚数は少ないタイプ。一泊二日の家族旅行で500ショット、選別して残るのは1/3以下
  • 連写しない、動画撮らない
  • 基本的にRAW現像する
  • コンビニ行く時に持ち出すカメラはGFX
  • 写真は画質重視
  • GFXはiPhone

といった具合です。ここからの評価は私とご自身の差分をさっ引いて読んでいただければ幸いです。

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FUJIFILM GFX100S II, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/4.5 1/60 35 mm ISO 400

 

簡易レビュー

新型の100S IIを1ヶ月使った感想は「噛めば噛むほど味が出る、スルメイカみたいなカメラだな!」です。正直予想よりもかなり好印象。公式サイトでPRされている項目は、旧型100Sと比べてしっかり諸々の向上を体感し続けられています。EVF、手ぶれ補正、AF、画質、どれもすぐに慣れてしまう、1日経てば分からなく様な「オイル交換」ではなく、使うたびにジワジワと良さを体感出来るのです。買い替えてよかったー!!!と声を大にして言えます。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/1.7 1/500 55 mm ISO 800

ただしこれは旧型の100Sを長く使った私だから嬉しいだけで、超性能を備えた他社製ハイエンド35mmフルサイズカメラから乗り換えたお方の場合「デカイ、重い、遅い、良いのは画質だけ、なんだよ。」という評価になってしまうんだろうな、とも思っています。

 

詳細レビュー

大きく変化を感じる部分

瞳・顔認識&AF性能

GFX100S IIで最も大きく性能向上したのはここだと思います。7歳の娘ちゃん、2歳の甥っ子ちゃんをGF35-70mmやGF55mmで撮ることができる様になりました。打率5分→5割ぐらいな印象です。これは衝撃的でした!!!

カメラにはAF合焦の緑枠あるじゃないですか。フジフイルムに限って言えば、あれはカメラがここにピントを合わせるつもりですよ!という宣言であって、実際に合焦できるかの信用度は低いと思っていました。瞳認識ON、AF-C、トラッキングAFモードというカメラ任せで動体を撮る場合は特に(ダメな傾向が)顕著です。しかし100S IIは違います。ちゃんと撮影画像が合焦しているのです。信じられる。上に挙げた2本はGFレンズの中でもAFは遅い部類です。そんなレンズでも希望が持てる。素晴らしいことです。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/2 1/40 55 mm ISO 400

 

この瞳認識やAF性能、定量的にお伝えするのは難しいので逆フリで感覚的に表現すると「15年前の自分が考える、カメラ任せ全自動で動体撮れるならこれぐらいの性能」といった具合です。分かりにくいか…まぁそんな感じで感動しきり。このAF性能が廉価版の100Sシリーズに降りてきたことは、私の様にGFXで子供を撮りたいユーザーには福音と言っても過言ではないでしょう。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/2 1/1250 55 mm ISO 160

 

私は撮れないシチュエーションでは撮らないタイプです。条件が悪ければカメラの電源ONしない。GFXで撮影失敗すると1億画素のクソ写真を量産することになりますからね。しかし100S IIなら撮れる!撮ろう!と思えるのです。買い替えてから、今まで自分がいかに多くの機会を諦めてきたのかを痛感しました。高機能なカメラの人たちはこんなにも多くの機会を、写真をモノにしてきたのか!とちょっと嫉妬したぐらいです。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/4 1/500 100 mm ISO 800

 

画質全般

同じ1億画素なら100Sも2型も画質は同じでしょ、動体の弱いGFXシステムで、びっくりする様な画質向上が無い買い替えはリスキーだね。。。ISO80?周辺画質向上?体感できるのかしら…と思っておりました。

体感出来ました!!!

AFと同じくこれも私の感覚で申し訳ないのですが、ISO80で撮影すると今までとは1段ぐらいクリアな描写をします。ニコンZシリーズはめちゃめちゃクリアな絵作りだと思っているのですが、そこに近づいた印象。この変化は感度由来なのか、周辺画質向上によるものなのか、最新の画像処理エンジンが頑張っているのか、全ての相乗効果なのかは分かりませんが…プラシーボではないと思います。

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/8 1/300 45 mm ISO 80

 

特にGF55mmを使っているときは顕著(画質向上を)に感じますが、GF35-70mmでも良い変化を感じます。というのも、フジの写真の立体感や解像感は(ピクセル単位の)程よいノイズ&粒状から発生していると思っているのですが、ちょっと感度が上がったり光量が足りなかったりGF35-70mmだったりすると、これが悪さをして写真の透明感が損なわれてしまっていました。しかしGFX100S IIとの組み合わせなら、この症状が軽減するのです。まるでレンズの性能が上がった様な体験でした。これが「大きく変化を感じる部分」に挙げた理由でもあります。嬉しいですねぇ。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/5.6 1/320 55 mm ISO 80

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/5.6 1/450 55 mm ISO 160

(ISO80を褒めているのに160の写真が混じる罠。設定失敗していました)

 

そこそこ変化を感じる部分

EVF性能

EVFは369万ドット→576万ドット、倍率0.77倍→0.84倍にスペックアップしました。大阪のフジフイルムフォトサロンでチェックした時は「違いは分かるけど、それで?」という感想だったので、購入後に変化を体感できるとは思っていなかった部分です。実際EVFを覗いて撮影していても「綺麗になった!」とは感じません。しかし炎天下や超逆光の厳しい状況でEVFの見えやすさは明確に向上しました。今まではファインダーの上に手をかざしたり目を眇めたりしていたのが無くなったので、快適に撮影できるシチュエーションが増えて便利です。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/4 1/500 55 mm ISO 160

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/1.7 1/600 55 mm ISO 160

 

全体的な操作レスポンス

電源ON→使える様になる時間や、ボタンを押してからの反応、タッチパネルの反応、全て一呼吸速くなりました。先代のタッチパネルは全くもって使い物にならず触れてもいなかったのですが、ようやく使えるようになった印象です。これもEVFと同じく直接写真に関係はしませんが、撮影に集中できる状況が増えて道具として快適になりました。

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/8 1/420 45 mm ISO 160

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/4 1/400 59.8 mm ISO 160

 

シャッターフィーリング

ここは好き嫌いが分かれるところだと思うのですが、私は大好きな部分なので取り上げます。フジのカメラはX-H1に「フェザータッチシャッター」というものを目玉の1つとして搭載しました。要は静粛なシャッターフィールということ。この思想はGFX100S IIにも受け継がれていると思っていて、これがとても気持ちいいのです。

文字に起こすと「静か」と「滑らか」で終わってしまうのですが…GFXの「大きく」「重い」シャッターユニットが精密緻密に制御されている感触が手に伝わってくるんですね。しっかり動いてくれている!というフィードバックがとても心地よい。X-H1や先代のGFX100Sを使っていた頃は「これが最高だ」と思っていたのですが、2型になって更に研ぎ澄まされた感があります。古い機械式カメラとは別ベクトルですが、シャッターを切るだけで楽しいカメラです。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/1.7 1/850 55 mm ISO 80

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/1.7 1/800 55 mm ISO 80

 

旧型の方が良かった部分

BISHAMON-TEX

フラグシップ機であるGFX100 IIで導入された亀甲柄の貼り革です。見た目はカッコよく、グリップしやすく、かつサラサラしていて快適…という良いことづくめのBISHAMON-TEX。しかし今のところ私の運用では旧型のフツーの貼り革の方が好みでした。理由は2つあります。

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/4 1/300 45 mm ISO 160

1つめ。私はスナップをする際、人差し指1本もしくは中指も添えての2本をグリップ部分に引っ掛け、カメラをブラブラさせながら持つことが多いです(ハンドストラップは通しているので不足の事態でも落とすことはないはず)。これをBISHAMON-TEXでやると亀甲柄が指に食い込んで痛くなるんですよね…グリップが高いことが裏目に出ました(私が妙な持ち方をしている自覚はあり)。また、昨今の猛暑日では高温故か、亀甲柄の突起部分が微妙にグネグネ動きグリップは高いのに剛性感が下がって妙な持ち心地です。総じてなんだか持ちにくいな…と感じる事が増えました。

2つめ。汚れが詰まりやすいです。購入前から嫌な予感はしていたのですが、GFXをiPhone扱いする、大事にはしても丁寧とは言えない私の運用だと、あっさり汚れが詰まっちゃうんですよね。幸い拭けば簡単に汚れは落ちますが気分はよくありません。小まめに手入れする習慣が必要です。

 

進歩していない部分

スロット蓋

SDカードスロットの蓋がグネグネ動きます。カメラを握った時に右手の手のひらに当たる部分なのですが、指の付け根でグッと押すと凹み、力を抜くと戻ります。ギシギシします。気持ち悪い。GFX100S筐体のグリップはとても持ちやすい形状で気に入っているのですが、その良さを完全に無下にする状況で、メーカーの人は量産品を握ってないのかな?と邪推したくなる有様。ちなみに先代も全く同じ症状があり、調整してもらったことがありました。改善されていて欲しかったなぁ。。。

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/4 1/50 45 mm ISO 80

 

親指ダイヤル

こちらは先代の頃、私が常に口汚く罵ってきた部分です。ダイヤルの回しはじめは重く、そこから急に軽くなり、1クリック回すのが非常に難しい…回す感触はゴムっぽくグネグネしていて落ち着きません。そして3年間使い込むとカッスカスの乾いた感触になり、回すたびに撮影意欲が減退します。100S IIでは改善されていて欲しい!と強く願っていたのですが、残念ながら祈りは届かなかったようです。今は新品なので多少マシではあるものの3年後の姿は容易に想像できる…そんなダイヤルです。グリコのおもちゃかな?このカメラ、5000ドルだよ?文句言ってないシャッターフィールは進歩できるのに…

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FUJIFILM GFX100S II, GF45-100mmF4 R LM OIS WR, ƒ/4 1/160 93.8 mm ISO 160

(ちなみにX-H2、X-T5のダイヤルはマトモ。やればできるんでしょ?どうして?)

 

おわりに

前半は誉めつつ、後半になるにつれトーンダウンする内容になってしまいました。しかし私の場合はとても価値ある買い替えだったので満足です。特にGF55mmで動く子供を「チャレンジ出来た」のは感動でしたね。撮影機会損失の低減、撮影体験の向上、システム全体の高画質化、GFX写真撮影ソリューションとして、大きく前進したモデルチェンジだと思います。

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FUJIFILM GFX100S II, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/400 35 mm ISO 80

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FUJIFILM GFX100S II, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/550 70 mm ISO 80

一方、動体性能を必要としない方には響くところが少なく、他社製超性能な35mmフルサイズ機から乗り換えた方には不足が多い、難しい立ち位置のカメラだとも思います。いくら使いやすくなったとは言え、中判カメラは特殊な領域で、ユーザーが己自身をしっかり理解し、カメラの方向性を理解し、吟味した上で覚悟をもって付き合う必要があることは変わりない、と思いました。おわり。

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FUJIFILM GFX100S II, GF55mmF1.7 R WR, ƒ/5.6 1/2400 35 mm ISO 160