はじめに
GFX100S IIを売り払い、インターバルを経てLeica M typ240を購入してから1ヶ月半ほど経過しました。
GFXに未練はありませんし、ライカ導入に後悔もありません。正直、購入時はGF45-100mmショックを引きずっていたのでワクワクした心持は皆無、明鏡止水を通り越して無気力無感動な購入でした。しかし想像以上にM型ライカでの撮影が楽しく、今は大変ポジティブに写真生活を送れています。望外の喜び!
今まで新製品をmngすると、1か月でファーストレビュー、12か月以降で本格レビューを書くことが多かったです。しかしM typ240は2013年製の枯れに枯れたデジタル製品。既に情報は出きっておりレビューの余地はありません。ですが、GFXからM型ライカに乗り換えた新鮮さは今だけのもの。それぞれの違いや特徴をしっかり感じられるうちに、両者の比較や思ったことを書き連ねようと思います。
LEICA Q (Typ 116) + 28.0 mm f/1.7, 1/60 F2.8 ISO1000
- はじめに
- 第1章:大幅ダウンしたスペックと年式、大丈夫?
- 第2章:階調——写真のパワーの源泉
- 第3章:撮影——狙撃と誘導ミサイル
- 第4章:現像——ライカは大変、GFXは楽だった
- 第5章:写真の質——GFXの目、ライカの目
- おわりに:すべてが逆ベクトル
第1章:大幅ダウンしたスペックと年式、大丈夫?
デジカメとしてどう?
デジタル製品として考えると M typ240は快適とは言い難いです。当然でしょう。デジタル記録可能な写真機と考えれば心穏やかです。
起動はそこそこ早い。書き込みは遅い。RAW + Jpeg記録させると5秒ぐらいランプ点滅しつづけます。私はJpeg不要なのでRAW記録に限定してます。この設定で記録時間は3秒ぐらい。連写はできないけど、連続単写なら問題なし。5秒だと撮影のリズムが崩れますね。液晶モニターはスペック上92万画素あるみたい。でも粗い。撮影画像の構図と露出確認用と割り切ってます。発売当時はLvが売りだったようですね。ただLvではピントが見えず、外した写真を量産する事になります。
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/4000 F4.0 ISO200
「ボディはこれしか持たず比較対象を排除する + デジタル製品として期待しないスタンス」で挑めば問題ありませんが、一般的にはオススメしかねます。頭を切り替えて使う必要アリですね。
画素数1/4は大丈夫?
画素数2400万画素について、十分か?満足か?と問われれば不十分で不満足と回答します。必要十分か?と問われれば「用途によっては…」と言葉を濁す感じ。「センサーサイズは正義」「多画素は正義」はGFXからM型ライカに乗り換えた今でも変わりません。この点はM10-RやM11が羨ましいです。「上質なデータの画素」なら1億でも10億でも欲しいところ。
では撮れる写真の良さは1/4なの?と問われれば、ご安心ください。当然そんなことはありません。「写真」トータルで考えるなら画素数は要素の1つでしかないからです。詳細は次の章で述べたいと思います。
第2章:階調——写真のパワーの源泉
GFXとM typ240、「写真」として一番違うのは階調だと思います。多い少ない、豊か貧しいではなく質の話です。
GFX
いわずもがなGFXは広いダイナミックレンジと多画素によって、GFレンズの上質な光を細やかに記録します。どんな状況でも情報を緻密に丁寧に、情報(色、コントラスト、露出、ボケ)の違いを記録することによって階調を作り上げる。情報量の暴力ですね。「白は200色ある」に近いと言えるでしょうか。
GFX100S + GF80mmF1.7 R WR, 1/250 F1.7 ISO640
GFX100S II + GF45-100mmF4 R LM OIS WR, 1/200 F4.0 ISO640
GFX100S II + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/200 F3.5 ISO320
4433センサーのレビューで「トリミング耐性が高い」「解像力がすごい」という評を見かけますが、これは分かりやすく飛びつきやすくPRしやすい表面的な観点で、写真としては構成要素の一部分でしかありません。もちろん、トリミング耐性も現像耐性も解像力も実際超すごいですよ。でも、それだけでカメラの凄さを表現するのはどうなんでしょうね。 もちろん上に書いた「階調」も同じく一要素に過ぎませんが、解像力や画素数など、GFXパワーが収束して「凄み」として発露しているのは階調だと思います。
GFX100S II + GF45-100mmF4 R LM OIS WR, 1/680 F8.0 ISO160
GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR, 1/500 F4.0 ISO160
M typ240
では画素数が1/4のM typ240は解像力も階調も1/4でお話にならないのか?ご心配なく。そんなことはありません!!! 実は購入前はかなり心配していました。情報量不足で色が薄く見えたり、カメラに厳しいラティチュードだとコントラストが低く見えたり。その組み合わせでは立体感が感じられなかったり、そんなコンディションにボケ量の大きいレンズを組み合わせると、場当たり的な立体感に見えたり。
ですが心配は杞憂でした。M typ240は「情報を記録ポイントが良い・巧み」なのです。絵作りが巧いと言えばいいのでしょうか。人間が心地よく、階調や立体感を豊かに感じるポイントが分かっていて、的確にそのポイントを狙って記録している感があります。また、組み合わせるレンズの選択肢も多いので絵作りのバリエーションも豊か。ライカすごいよ。。。
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/4000 F1.0 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/1500 F5.6 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/350 F1.7 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/750 F4.8 ISO200
それに、GFXでもM typ240でも常にポテンシャルを発揮できる被写体を撮れるわけではありません。性能をギリギリまで絞りだせば、写真の質は当然GFXの圧勝でしょう。ですが撮影と現像を楽しむ、自分好みの写真を得る、という観点で比較すると、ベクトルは異なるものの総合的にあまり差は感じません。心配は杞憂に終わり一安心です。
GFX100S II + GF45-100mmF4 R LM OIS WR, 1/200 F8.0 ISO250
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/125 F2.8 ISO3200
※でも、M typ240ボディそのままに4433センサーを積んでくれたら(そしてレンズのサイズは変わらなかったら)最高だなと考えたり。
閑話休題:実験
高性能レンズとPureRawとLrのスーパー解像度を組み合わせればワンチャン…と思って実験してみたことがあります。結果はNG。全くだめで話になりませんでした。このハリガネの様なアホ毛をご覧ください。ゴワゴワのイヤーマフも酷いもんです。こんな画素はいくつあっても良い質感など生まれません。はいお疲れー、解散解散っ!
LEICA M (Typ 240) + APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, 1/125 F4.0 ISO3200
こういう描写を求めるならGFXは強いですね。
GFX100S + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/1100 F3.5 ISO200
ただ、PureRawやスーパー解像度というデジタル技術は素晴らしいものだと思います。実験写真、元データはISO3200ですからね。M typ240のISO3200はノイズがシミみたいになってキッチャナイです(びっくりしました)。そのデータがここまで補正できる、というのはすごいこと。まぁビフォーもアフターも私の基準を超えていないのでそういう意味では同列です。スーパー解像度、本当に文字の通り画素は補完してくれます。名称に偽りなし。でも、本当に必要なのは階調ですよね。スーパー階調が実用的な性能で実装されたら世界が変わるかも。
第3章:撮影——狙撃と誘導ミサイル
M型ライカ購入記事でも触れましたが、撮影スタイルの違いを簡潔に表すと「M型ライカは狙撃、GFXは誘導ミサイル」だと思います。(当然人によりけりです)
M型ライカは被写体を見つけ、撮りたい距離まで移動、レンズの距離指標を大まかにセット、最後にレンジファインダーで答え合わせをして、シャッターを切る。自分が動く場合もあれば、被写体が撮りたい距離に来る瞬間を狙い撃つこともあります。私はスナイパーでレンジファインダーはさながらスポッターといったところでしょうか。
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/350 F2.4 ISO200
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/1500 F1.7 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/125 F2.8 ISO3200
一方GFXでは瞳認識とAF-Cに被写体の追尾を任せて、ロックオンできたら構図を調整して撮影する。誘導ミサイルみたいなイメージです。瞳認識とAFが作用する範囲が有効射程で、撮影する際に距離なんて考えたこともありませんでした。
GFX100S + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/500 F5.0 ISO200
GFX100S + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/250 F3.5 ISO200
どちらもカメラのポテンシャルを引き出すには工夫が必要で、気を使うポイントも全く異なります。 M型ライカは距離と露出で構図はどうでもいい。逆にGFXはAFと構図が大事で、距離や露出は撮影時に全く意識しません(カメラお任せでオッケー)。
GFXは露出についてはかなり雑でも後からなんとかなりますが、AFを外すと1億画素のピンボケ写真が量産されて心と(NASがあっても)ストレージを圧迫します。M型ライカは逆で、ピント合わせという概念が希薄な代わりに露出が鬼門。この苦労は現像の章で詳しく触れます。 センサーが受け止められるダイナミックレンジ量で撮るM型ライカと、AF-Cと瞳認識が有効な条件で撮るGFX、といった印象です。
撮影するタイミングは少し変化した
GFXはEVFとLCDで完成写真を見ながら構図を切り詰めており、引き算と足し算の緻密なバランスを撮る作業。どれか一つダメなら「撮らない」でした。 M型ライカはもっと開放的な印象です。被写体、距離、自分、これらの要素が気持ちよく合致した時にシャッターを切る感じ。心情的にはシャッターを切るために撮っているみたいな。うまく言えませんがそんな感じです。
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/125 F2.8 ISO1000
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/250 F2.8 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/4000 F6.8 ISO3200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/1500 F9.5 ISO3200
閑話休題:ライカに乗り換えると写真が下手になる?
「○○さんが言っていた」とは明言できませんが、このフレーズはよく聞く気がします。ライカユーザーになる洗礼みたいなもので、自分もこれを体験できるのか…とちょっと期待していましたが、私は全く感じませんでした。これまでレンジファインダー機も目測機も使ってきたのであまり影響が無かったのかもしれません。特にGS645Wで培った距離感覚がM型ライカに生きている実感があります。素通しファインダーの目測カメラで撮る楽しさ、ファインダーを覗く前に絞り・SS・距離を合わせ、さっと構えて撮る。このスタイルが自分には合っているんだなと改めて思いました。
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/1500 F4.0 ISO200
第4章:現像——ライカは大変、GFXは楽だった
GFXは現像が楽でした。なんせ富士フイルムお得意のフィルムシミュレーションがあります。これを写真毎に選択→Lrパラメータを調整、というフローでした。プリセットは未使用。フィルムシミュレーションという強力な下地があるので、フジ機の現像にプリセットは不要だと思います。また、AEとAutoWBが優秀で、現像時のベースが上質&16bitRAW由来の現像耐性の高さも武器です。ハイライトもシャドウも、Lightroomのスライダーをグイッと動かせばちゃんと情報が帰ってくる。「とりあえず撮っておけばなんとかなる」という安心感がありました。
GFX100S II + GF35-70mmF4.5-5.6 WR, 1/400 F8.0 ISO80
GFX100S II + GF55mmF1.7 R WR, 1/1250 F4.0 ISO160
GFX100S + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/105 F4.0 ISO1600
M typ240の現像は正直難しいです。センサーサイズとエンジンの古さを如実に感じますね。とにかく露出を外すと色もコントラストも薄くなり、見るに耐えない写真になります。スライダーを動かしても情報は戻ってきません。情報があっても階調が破綻してすぐトーンジャンプしたり、ノイズにまみれたりします。結果として、カメラに確実に記録できる条件・露出に収束していき、今のところ似たような写真・似たような現像が増えがちです。まだ現像フローも確立できていませんし、どの程度パラメータを調整できるか限界値も把握できていませんが…まずは撮影が超重要で、現像を意識して破綻のないRAWデータを持ち帰る必要があります。当然と言えば当然ですが…幸いカメラの使い勝手がプリミティブ、AEが優秀なフィルムカメラと思って使っています。
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/500 F5.6 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/750 F6.8 ISO200
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/4000 F1.7 ISO200
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/4000 F4.0 ISO200
第5章:写真の質——GFXの目、ライカの目
Lightroomで両者の写真を並べて見ると、目の使い方が変わっていることに気づきます。被写体を見つける目、写真を見る目、いろいろです。特にこの記事を書いている12月後半でかなり変わってきたなと強く感じます。慣れてきたのでしょう。逆にGFXの目は薄れており、過去写真を見返すと階調の豊かさに驚きます。少々残念な気もしますがこの流れは止められませんね。
GFXの写真は階調の滑らかさが生む色の濃さが際立つ。隙のないGFレンズが均質な光を届け、1億個の画素があまねく記録する。露出計とエンジンが適切なコントラストを与えてくれる。安定感がすごいです。
GFX100S II + GF35-70mmF4.5-5.6 WR, 1/200 F8.0 ISO200
M型ライカの写真は滑らかさこそ無いものの、第2章で触れた「記録ポイントの巧みさ」が写真を見るたびに実感できます。快感!そこに、レンズが多種多様な光を纏わせてくる。最近はレンズの描写の違いに目が行くようになりました。GFXの時はボディの仕事ぶりを見ていた気がしますが、M型ライカではレンズの仕事ぶりを見ている感覚です。
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/500 F8.0 ISO200
LEICA M (Typ 240) + SUMMILUX-M 50 mm f/1.4 ASPH, 1/125 F1.2 ISO400
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/1500 F1.4 ISO200
LEICA M (Typ 240) + APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, 1/125 F2.8 ISO1000
LEICA M (Typ 240) + Tele-Tessar T*4/85 ZM, 1/1500 F8.0 ISO200
GFレンズとコシナのレンズ
正直なところ、ここ数年GFレンズが最強だと思っていました。4433フォーマットという大きなセンサーに均質&バランス良く光を届ける仕事ぶり、素晴らしいじゃないですか。
GFX100S II + GF50mmF3.5 R LM WR, 1/200 F3.5 ISO1600
しかし違いました。M型ライカに乗り換えて、購入したのはBiogon 2.8/28とCOLOR-SKOPAR 50/2.2の2本だけですが、GFレンズに勝るとも劣らない製品です。分かりやすい「解像力」というモノサシだけで比較しても、中心部分ならカラスコ君とGF単焦点レンズは同レベルだと感じています。ビオゴンさんもフィルム中判レンズと比較すると次元が違う。それに、この2本は絞り、距離、像高などで描写が「写真として」良いベクトルに変化します(恐らくコシナは計算済みなんでしょう)。驚愕でした。
LEICA M (Typ 240) + COLOR-SKOPAR 50mm F2.2 VM, 1/125 F2.8 ISO640
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/4000 F2.4 ISO200
もっとも、GFレンズとコシナのレンズは評価ベクトルが異なると思います。ターゲットのセンサーが全然違いますし。比べること自体にあまり意味はなさそう。均質さを追求して真実の光を届けるGFレンズと、光にいろいろ纏わせて、豊かな光を作るコシナのレンズ。どちらも自分たちの土俵で最高の仕事をしていると思います。
GFX100S II + GF45-100mmF4 R LM OIS WR, 1/110 F4.0 ISO3200
GFX100S II + GF45-100mmF4 R LM OIS WR, 1/150 F4.0 ISO3200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/3000 F4.0 ISO200
LEICA M (Typ 240) + Biogon T*2,8/28 ZM, 1/500 F6.8 ISO200
おわりに:すべてが逆ベクトル
この記事をまとめるにあたり、GFXとM typ240、撮影・現像・色々な面で対極にあるなと改めて実感しました。ただ幸いなことに「自分の写真」総体で見ると、機材は変わってもここは変わっていない気がします。Lrのライブラリをサーっと眺めてみても違和感はありません。新しいカメラやレンズに舞い上がりつつも踊らされては無いようです。良かった良かった。改めて、GFXに未練なし、ライカに後悔なし!です。おわり。
LEICA M (Typ 240) + not selected, 1/750 F6.8 ISO200
おまけ:ライカすごい
- SNSのインプレッションup
- 街中で話しかけられる率up
- ライカ起点で話が盛り上がる率up
写真機じゃなくて最早コミュニケーションツールなのでは…