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FUJIFILM GFXシリーズで撮った写真をつらつらとご紹介。

GF35-70mmF4.5-5.6ファーストレビュー - GFXをiPhoneと言い張るために

はじめに

先日マップカメラの夜市でGF35-70mmで購入しました。美品がヤフオクやメルカリの相場よりもお安くなっていたので飛びついたのです。でも衝動買いというわけではありませんよ。常々欲しいなーっと思ってウォッチしており、お安くなるタイミングを待ち構えていたのです。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 35 mm ISO 100

このレンズはGFX50SⅡのキットレンズとして登場しました。GFXシステムの間口を広げるための急先鋒といったところでしょう。XF18-55mmやXC16-50mmは「FUJIFILMのキットレンズは良い」という評判を確立したと言われています。当然このGF35-70mmも同じ目線で見られてしまうわけ。既にこのレンズのレビューは結構沢山書かれているのですが、今回は何故導入したのか?という理由や、私が使ってきた他のGFレンズと比較してどうなのか?といった点を述べたいと思います。

※レビュー内容と写真はあんまり関連無いです。

 

導入の狙い(長いです)

GFXシステムの弱点は何でしょうか?いろんなご意見があると思いますが、重量、サイズ、最短撮影距離、この辺りでしょう。サブ機としてX100VやGR、はたまた軽量な35mmフルサイズ機なんかを導入してしまうと「サブで十分」「GFXは防湿庫の肥やし」といった状況になってしまう。私がGFX50Rを導入してから一貫としてサブ機を持たないのはこれが大きな理由です。なので雨の日も風の日も子供と出かける日もコンビニへ買い物に出かける日もGFXを持ち出し、やる気の無い日はカメラを持ち出さないか、小さいフィルム中判カメラPearlⅢで運用していました。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/480 70 mm ISO 200

ですがたまーにカメラを持っていないタイミングでシャッターチャンスが巡ってくるんですね。その度に苦し紛れにiPhone(12)で撮影して絶望するわけです。こんな画像を残しても未来の自分は全く満足しないぞ、と。未来の自分が許しても今の自分はそもそも許さねー!って感じ。ここ数年GFXでしか写真を撮っていませんので、どうしても「自分の写真」はGFXでシミュレートされてしまいます。当然iPhoneで撮った画像を見てもその落差は激しくガッカリしてしまう。そこでなんとかGFXをiPhone的運用できる方法を考えていました。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 70 mm ISO 500

中判フィルム時代のハーフマクロレンズを常用しようとしたり(結局重い)、M42マウントの寄れるレンズを検討したり(イメージサークルをカバーしない設計のレンズは私的にご法度)、PENTAXのK-3 Mark III Monochromeが気になったり、GRⅢxのMonochromeが発売されるまで粘ろうと思ったり(モノクロで子供の写真撮っても奥さんにしばかれる)、随分と検討は迷走。GF32-64mmを気に入って運用している手前、GF35-70mmは頭の中の欲しいレンズリスト入りしていなかったのですが、あまりも迷走が酷いので一番オーソドックスなこのレンズを検討し始めました。改めて調べると癖は強いものの楽しんで使っている情報が結構見つかり、欲しいレンズリストの上の方にランクアップしたタイミングで上記の夜市で発見したのです。

長くなりましたが、導入の狙いは「GFXをもっと使うためにお気軽なレンズが欲しい」「GFXをiPhone代わりに使いたい」といったところです。

 

ファーストインプレッション

質感

重量やサイズ感は事前に調べていたので想像通り。マウント部分は普通に金属です。一部サイトで他のGFレンズと異なるとあったのですが、ぱっと見違いは分かりませんでした。私の目が節穴なのかもしれません。新同品のような美品なので、ボディに装着した際の感触は手持ちレンズ内で一番良かったです。

リングのラバーは他のGFレンズと同じに感じます。だたピントリングを回した時のトルク感は劣っていますね。悪くはありませんが。関心したのは沈胴機構を繰り出した時の感触で、GF32-64mmのズームリング回転時と同じく、内部の空気が綺麗に抜けて精密に緻密に動作している様子が手に伝わってきます。繰り出した後も鏡筒は剛性感がありました。フード本体の質感は他のGFレンズ同様ですが、回転しながら取り付ける感覚はグリコの玩具レベルで、ここ数年で触ったフードの中ではぶっちぎりの最低最悪でした。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 62.9 mm ISO 640

 

描写

これは非常に評価が難しいです。良い点もあれば悪い点も多い。焦点距離 × F値 × 撮影距離の組み合わせだけ評価点があるとして、条件Aならよく写るけど条件Bは使い物にならない。そんな感じです。ファーストインプレッションということもあり使いこめておらず、正確にレビューすることは現時点では難しい。ただ少し使って思ったのは「これまで使ってきたGFレンズはどれも素晴らしかったんだなぁ。特にGF32-64mmのバランスは凄いね」でした。GF35-70mmは特性の変化が激しすぎてコントロールするのは至難かと。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/2500 35 mm ISO 200

 

GF32-64mmとの比較

上の「描写」では日和ったことしか書きませんでした。それではツマラナイので、焦点距離の近いGF32-64mmを評価軸として本レンズの感想を述べたいと思います。ただし私が気になった点、気付けた点なので、ムラはあると思ってください。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/450 43.3 mm ISO 200

明確に弱い点

階調

試写して最初に気になったのがこの項目です。ハイライトが粘ってくれない。アッサリ飛びます。撮影時は「ちょっと飛んだけどGFXはダイナミックレンジ広いからRAW現像で調整すればいいやろー」と思っていた私は甘かった。露出やハイライトのパラメータを下げてもデータが戻ってきません。無理やり調整すると写真全体の階調が破綻します。レンズの評価でよく見る「トーンが滑らかでイイね」が今までイマイチ分かっていませんでしたが、この日理解しました。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 41.8 mm ISO 400

望遠端の後ボケ

絶対的に悪いとは言いませんが、どうしてもボケはうるさい傾向にあります。背景処理にはちょっと気を使いますね。逆に前ボケは何も感じなかったので悪くないのかもしれません。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 70 mm ISO 640

広角端の歪曲収差

Lightrommはレンズのプロファイルが提供されているので歪曲収差は自動補正されています。しかし、それでも、ちょっと違和感を感じました。真っ直ぐじゃ無いって気になるんだなぁと実感した次第です。もちろん更に補正することは出来ます。でも上手くいかない。あちらを立てればこちらが立たず。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 35 mm ISO 160

 

肩を並べる点

広角端の解像

ここは非常に好印象でした。絞り開放の近接でも使えますし、絞って遠景なら全く問題ありません。ピシィッとしていて気持ちいいですね。GF50mmと同等かも。安心して使えます。28mmという画角はちょっと苦手ですが一般的には使いやすいと思われます。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/280 35 mm ISO 200

色収差

私は太陽の透過光で透ける葉っぱ大好き人間です。森の中でもその辺の街路樹でもよくやる。こちら写真は、ぱっと見よく写ってクリアだなーとしか思っていなかったのですが、よくよく見ると色収差を感じません。クリアさの理由の1つはこれなんでしょうね。というか、GF32-64mmやGF50mよりも優っているかも…

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 35 mm ISO 400

画面左上、一番厳しい部分の等倍切り出しです。色収差感じません。凄いです。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 35 mm ISO 400

発色

解像や収差って分かりやすい評価項目な反面、発色や階調って定量的に測るのは難しいです。私の様なアマチュアで感覚で撮っている人間には特に。基本的に「それってあなたの感想ですよね」です。話が逸れました。このレンズの発色、好印象です。理由はただ一つ。ノスタルジックネガで綺麗に空の青が出た。気持ちよかった!それだけです。GF35-70mmに対する信頼度+1。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 35 mm ISO 200

 

噂の望遠端、開放、最短

デジカメWatchのファーストインプレッションにはこうあります。曰く

絞り開放時の周辺部や至近側ではホワッとする場合があり、特に至近端&開放ではベス単のようにソフトに写る場合がありました。

dc.watch.impress.co.jp

ベス単www

個人的に、こういう分かりやすいシチュエーションでの一風変わった特性というのは好きです。コントロールし易いですから。以前使っていたX100Fは、絞り開放の近接撮影時がソフトな描写で気に入っていました。実は「GF純正レンズでそんな特性があるなら活かしたい!」と購入の決め手の1つだったりします。

この点は気になっていたので卓上三脚に載せて検証してみました。最短撮影距離で絞り開放F5.6→F8.0→F11.0と3枚撮影。

F5.6

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/25 70 mm ISO 800

F8.0

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/12 70 mm ISO 800

F11.0

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/11 1/6 70 mm ISO 800

F8.0が最も解像しており、F11.0では僅かに回折の影響を感じますね。ついでに等倍でF5.6とF8.0を比較。

どうでしょう?F8.0のキレは気持ちがいいですね。GFX100Sの1億画素にもしっかり耐えています。F5.6とF8.0の差は非常に大きいです。でも、でも、F5.6良くないですか?ソフトな描写の中でしっかり解像しています。破綻もしていない。この等倍画像を見た時は嬉しかったです。これは使えるぞ、と。

フィールドで実際に使ってみるとこんな感じ。モノクロはK-3 Mark III Monochromeや(幻の)GRⅢx Monochromeを意識しています。やりたい事が上手く形になって嬉しい2枚でした。このアプローチはGF35-70mmの強みになると思います。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/450 70 mm ISO 200

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5.6 1/75 70 mm ISO 800

ただし打率は低いです。70mmの最短撮影距離は35cm、カミソリではないものの被写界深度は結構浅い。望遠端はボケ質があまり良くないこともあって、少しでもピントを外すと一気に解像が下がりキチャナイ感じになります。望遠端の絞り開放使えねー!という意見の方はこの例に当てはまるのでは…と思いました。AFはあんまり信用出来ないのでMF推奨です。

 

iPhoneとして運用

私が思う理想のiPhone写真撮影って、

①ちょっといいなーと思い、

②とりあえず撮って、

③カメラロールで確認することもなくポケットに仕舞い、

④忘れた頃に見返して楽しく、

⑤気合いを入れる必要が無い。

こんな感じです。GF35-70mmはこれが可能でした。(相対的に)軽いので持ち出す心理的ハードルは低く、上の様な撮影をする場合は大抵広角端なので、F8.0やF11.0で固定しておけば描写はOK。気分が乗ればちょっと工夫してもいいし、撮らなくてもいい。(相対的に)軽いのでダメージは皆無。近所の散歩にやピクニックに持ち出して使ってみて、求めていた通りのいい感じでした。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 35 mm ISO 320

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/5 1/320 43.3 mm ISO 400

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/320 70 mm ISO 200

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 35 mm ISO 400

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, /8 1/250 35 mm ISO 640

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 35 mm ISO 200

 

総評

GF35-70mm、GFXシステムの入門として用意されたレンズですが、GFXの真価を発揮するのはかなり難しいと感じました。おおこれは良い!というポイントは多々あります。他のGFレンズと並べても見分けられない写真を撮る事も可能です。ただし非常にピーキーな特性でスイートスポットが狭いのも事実。更にズームレンズなので焦点距離毎に特性を理解しコントロールしないといけません。百戦錬磨の趣味人やプロのカメラマン、論理的思考の持ち主なら可能でしょうが、初心者の方には難しいのではないかと心配になります。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 62.9 mm ISO 250

XシリーズからのステップアップでワクワクしながらGFX50SⅡとGF35-70mmのキットを購入し、喜び勇んでパシパシ撮った時、果たして当たりは引けているのか?引いたとしても一貫性の無さ(コントロール出来ないとそう感じるかも)に戸惑わないか?「折角GFX買ったのになんだかパッとしないな…でも大枚叩いて買ったカメラにそう思いたくない。気のせいだ腕のせいだこんなものだ」なーんてモヤモヤした思いをワクワクユーザーに与えていないか?ちょっと邪推していまいました。考えすぎかもしれませんが。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/250 70 mm ISO 200

ではオマエはどーなんだ?という点について、私は非常に気に入っています。お買い得価格だったという点も大きい反面、上手く使えれば大満足、iPhone的気軽な撮影OK、他のGFレンズでは不可能な撮影倍率、楽しみ甲斐のある望遠端、色んな使い方が出来そうです。癖のあるマルチロール機ってところでしょうかね。私の運用ではGF32-64mmやGF50mmと用途が重複しないのもグッドですね。更に使い込んでいく中で許せない点が見つからなければ、1年2年と長く使いたいなぁと思えるレンズでした。おわり。

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FUJIFILM GFX100S, GF35-70mmF4.5-5.6 WR, ƒ/8 1/340 70 mm ISO 200