shigiphoto days

FUJIFILM GFXシリーズで撮った写真をつらつらとご紹介。

GF32-64mmF4.0を1年使ったので長期レビュー

はじめに

年に数回やっている「頑張ってレビューを書こう!」シリーズ?、今回はタイトルの通りGF32-64mmF4.0です。購入したのは2021年の年末だったので1年以上使ってますね。私がこれまで所有したレンズの中では長寿の部類です。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/400 32 mm ISO 100

 

このレンズは35mm換算で約25mm-50mmの焦点距離をカバーする標準2倍ズーム。明るさはF4なので数字的には全く特筆すべきスペックではありません。にも関わらず重量875g最短撮影距離0.5-0.6m最大撮影倍率0.12倍という、昨今のフルサイズ/APS-Cマイクロフォーサーズ機用レンズと比較すると全く映えない数字のオンパレードです。しかし、本レンズは多少の重さ不便さは全く気にならない描写です。大丈夫だ、問題ない。数字だけ並べて論じても本質は見えない、という事をこのレビューでお伝えしたいです。

 

まずはお気に入りのクリアな都市モノクロスナップから。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/850 32 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/3800 64 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/500 64 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/1700 32 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 32 mm ISO 640

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 32 mm ISO 500

 

信頼できるズームレンズ

私はこれまでそこそこの数のレンズを使ってきました。その大半は単焦点レンズです。なので、ズームレンズの性能に対する評価はかなり厳しいと思っています。ただしのべつ幕無しに高性能を求めるのではなく、単焦点レンズには凄みを、ズームレンズには弱点の少なさを求めています。

(出だしがモノクロだったので次はカラーのムスメ写真1枚でバランスを撮ろうという思惑)

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/1250 64 mm ISO 200

 

ズームレンズの評価で「単焦点レンズ○○本分!」という煽り文句を見かけることは多いと思います。が、最高性能が発揮される状況(焦点距離F値、撮影距離)においては単焦点レンズと見分けが付かなくとも、最も性能が低い部分では足元にも及ばない…なんてことが実際には多々あります。正しくは「ベストエフォート単焦点○○本分!」と表現するべきですね。

この場合、広角端が高画質で望遠端が低画質担当です。撮影終了後、PCで写真チェックするしゃないですか。広角、広角、広角、望遠、望遠、広角、と写真が並んでいたとします。すると最初の広角3枚はイイねイイねイイね、4枚目5枚目の望遠でハァ!?となり、またイイネに戻る…なーんて事になるわけです。この振れ幅が大きいと辛い。だんだんと望遠端は使わなくなり、広角端専用機になり、なら単焦点でいいじゃん→下取りへ。これが今まで私が使ってきたズームレンズの末路です。しかしGF32-64mmはこの例には当てはまりません。正確には広角端と望遠端の画質差が小さく、写真を並べてもガッカリしないレンズということ。私がこれまで使ってきた中では最も信頼できるズームレンズです。「信頼」はレンズに対する最高の賛辞です。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/5.6 1/950 32 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/5.6 1/600 32 mm ISO 200

 

さてここで公式サイトの謳い文句をご紹介します。

曰く

機能性と高画質の融和、ここに極まる

日常に必要な焦点距離のほとんどをカバーしながら、携帯性に優れ、妥協のない描写性能を誇る究極の常用レンズ。ラージフォーマットへの案内人として、その魅力をいかんなく体感させてくれます。

fujifilm-x.com

 

とのこと。これには完全同意です。上手いキャッチコピーを考えたなぁと感心するばかり。本当にバランスが良いレンズです。私が所有しているGFレンズは32-64mm、50mm、110mmの3本ですが、2022年の使用比率はほぼ1:1:1でした。明確に50mmと110mmを使わないときはとりあえず32-64mmにしておけばオッケー、というズームレンズとして非常に正しい立ち位置です。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/105 32 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/5.6 1/125 64 mm ISO 1600

 

各種レビュー

前置きが長くなりましたが、ここからは実際に使った感想を述べていこうと思います。まずは焦点距離と関係のない項目、その後に焦点距離に関することをご紹介します。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 32 mm ISO 1000

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 32 mm ISO 640

 

質感

客観的に評価しずらい項目で主観的な感想ですが、悪くはないと思います。手に持って触ると高級感や官能性は皆無な反面、丁寧で高品質な感触は感じられますね。特にズームリングを動かすと「スー、シュコッ!」という緻密なフィードバックがあって、ガタなく一定のトルクで綺麗に機構が動いているんだなぁと感じられます。これは気持ちいい。あと、FUJIFILM製レンズ最大の弱点と思っている絞りリングの感触の悪さ、これも良い部類です。GF110mmは最悪でガリガリのカスカス、でもGF32-64mmは適度なクリック感とトルクがあります(同時期のレンズのはずなんですが…この差は一体なんなんでしょうね)。最もチープなのはフード。Theプラスチックです。でもフードはぶつけた時の緩衝材の役割もあるので実用品一辺倒でOKかな。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/250 32 mm ISO 320

 

防塵防滴

あまり正確な事は言えませんが、昨年、雨の鈴鹿サーキットでF1の撮影にGF32-64mmとGF110mmを使いました。終日しとしと雨が降る中むき身で使い続けましたが(私は上下ワークマンのレインウェア、カメラはむき身、撮影中は傘は差さずカメラに水滴が溜まってきたらタオルで拭く運用)、特に不都合は生じませんでした。GFX100S本体のEVFが曇ったぐらいでレンズは完璧。F1に夢中で雨に濡れたカメラの写真がないのが悔やまれます。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/550 64 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/850 45.7 mm ISO 200

 

AF

リニアモーター搭載なのでGFレンズ内では最速の部類でしょう。GFX100Sで使うとストレスは感じませんしAF-Cなら動き回る子供も撮れます。この「撮れる」も主観ですが…30mぐらい離れた場所から走ってくる5歳児を撮ろうとした場合、ハナから諦めずにとりあえずチャレンジしてみよう!と思える程度ですかね。ちなみに同じLM搭載のGF110mmではちょっと厳しいですし、非搭載のGF80mmは歩いて遠ざかる人ですらピントは合わないので撮ろうと思いません。そいういうレベルでは「撮れる」です。センサーのフォーマットが大きいとAF駆動用レンズも大きくなるので、たとえ電子的な性能が向上しても物理的に俊敏なAFは難しいのでしょうね。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/500 64 mm ISO 200

 

この写真はAF-Cに全てお任せして自分はタイミングだけに集中して取りました。撮影距離が変わらない状況だと比較的成功率(合焦率)は高い印象。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/1000 49 mm ISO 640

 

正確性は非常に高い…と言いたいところですが、夜の屋外の光の当たらない場所でポートレートをしようとした時に、めちゃめちゃピンを外すことがありました。AF-Sです。その時はMFで対応しましたが、苦手な条件なのかもしれません。印象的だったので取り上げましたが、それ以外では特に何か感じた事はありません=ちゃんと合焦します。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/1000 32 mm ISO 250

 

描写(全般)

広角端から望遠端までほぼ均質な印象です。1億画素に余裕で耐える解像力、F4ながら癖のないボケ、透明感のあるヌケと自然な発色…どれも高次元でまとまっています。反面、GF単焦点レンズに感じる凄みはありません。驚異的な解像、大きく滑らかなボケ、言葉に出来ないオーラ、どれも持ち合わせてはいません(あっても薄い印象)。まぁそんなことを言い出したらもっと重くてデカくてお高いレンズになってしまうことは確実。標準ズームレンズに求める物ではありませんね。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/1100 32 mm ISO 200

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/250 64 mm ISO 320

 

絞り開放にするとこの程度はボケます。このボケ量が大きいか小さいかは好み次第でしょう。私にとっては十二分。1枚目が広角端で2枚目が望遠端です。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/220 32 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/850 64 mm ISO 200

 

このレンズ、本当はもっと褒めたいです。絶賛したい。しかしどう評しても「GFX水準でそつなく纏まったズームレンズ」になってしまうんです。「GFX水準」というのは凄く大変で素晴らしいはずなんですが。(破綻しないって凄いことですよね)

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/550 32 mm ISO 200

 

ただ、ふとした拍子に「おっ、いいじゃん!」という写りをします。しかも特定のジャンルだけではなく、先に述べた様に素性がいいので色んなシチュエーションでヒョイと良さが顔を出す感じ。被写体の質感が良かったり、トーンがうねったり、スカッと抜けたり。「GF32-64mm?めちゃいいですよ。どんなシチュエーションでも使える万能神レンズですよ!」と自信を持って手放しで言えないのは、私が使いこなせていないってことかもです。。。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/60 32 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 120 秒 32 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/5.6 1/35 32 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 64 mm ISO 1600

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 64 mm ISO 320

 

このレンズの明確な弱点

望遠端64mmでの描写

こちらの写真は望遠端で絞り開放、撮影距離2-3mで撮ったものです。なんというか…良さがありません。解像はしているのですが特徴もなくただただ写っているだけ。ただしこのウィークポイントが顕著化するのはこの条件だけで、撮影距離がもう少し近づいたり、F値を変えると描写のどこかに特徴が現れて(ボケだったり解像力アップだったり)気にならなくなります。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/320 64 mm ISO 250

 

F5.6まで絞ったパターン。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/5.6 1/250 64 mm ISO 320

 

絞り開放で更に寄ったパターン。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/280 64 mm ISO 200

 

絞った遠景。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/850 64 mm ISO 200

 

(ダメなシチュエーションが分かっていて、コントロール出来ずに写真が悪いなら、それは自分のせいですよね。レビューを書いていて思いました。写真の不出来をレンズのせいに出来ないレンズです。精進しないと…)

 

広角端32mmでの周辺描写

絞り開放では周辺にコマ収差が発生します。F8ぐらいまで絞ると改善するものの描写は甘いですね。広角で遠景を隅々までピシィッ!と撮るのは難しいんだなぁと思います。ただし幸いなことに等倍鑑賞しない限り分かりません。もちろん中央はしっかりしているのでそちらに目が奪われますし。幸い私は広角端の周辺描写を気にしないので何か感じた事はありませんが、中央比で落ちる事は事実なので取り上げておきました。(写真クリックで少し大きな画像が確認できます)

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/11 60 秒 32 mm ISO 100

 

画面の隅に光源があるので弱点の写真として使っていますが、この写真は手持ちで撮影しています。SSは1/3。数回トライすれば止まります。画質優先でISO1600にしているのでこれを上げればもっと歩留は上がりますね。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/3 32 mm ISO 1600

 

そういえば色収差を気にされる方は結構いらっしゃいますが、私はまったく気にしない(検知できない、もしくは良く感じてしまう)タイプなので、今回のレビューでは言及せずにしておきます。すみません。

 

おわりに

ここまでに色々述べた通り、GF32-64mmは信頼できる良いズームレンズです。強烈な個性は無いものの、上手く使えればそこここで良さが顔を出すでしょう。重いとかデカいとか寄れないとか、明確な弱点はあります。でもこの辺は生まれ持った特性でどうにもならんですよね。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/1500 64 mm ISO 200

 

気になる方は(気にできる方なら)自分の運用方法にマッチするかしっかりご検討下さい。合わない場合は即却下でいいと思います。逆に描写が良ければ我慢できるかもね、という方の背中はドンと押して差し上げたい!

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/320 32 mm ISO 125

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/4 1/600 64 mm ISO 200

 

ズームレンズ=便利レンズという印象が一般的ですがGFレンズはそうではなくて、焦点距離が変えられるのはオマケ程度に思っておいた方が幸せかもです。ここまで述べてきた良い点が色々ある上に、実は焦点距離も可変なんですよー、てな感じで。その分パターンが多くて使いこなすのは大変ですが、奥が深いレンズだと思います。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/220 32.6 mm ISO 800

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/400 32 mm ISO 200

 

そうえいば掲載する写真をセレクトしていてしみじみ「たくさん撮ったなぁ。気に入っている写真多いなぁ」と感じました。ここまで色々書いてきましたが、1年使ってそう思える事こそ、GF32-64mmが良いレンズだという証明です(と言っておく)。おわり。

FUJIFILM GFX100S, GF32-64mmF4 R LM WR, ƒ/8 1/1600 32 mm ISO 200